「最近、残業が多くて疲れがとれない」
「残業が多く、自分の体が心配だ」
という方は多いのではないでしょうか?
そういった方は、ぜひ過度の残業時間が体に及ぼす影響を見てください。
過労死やうつ病など深刻な事態になる前に、自分を守りましょう。
残業時間だけでストレスや危険度は測定可能?
そもそも、残業時間だけで過労死、自殺、うつなどの危険な事態を予測する事は可能なのでしょうか?
厚生労働省では、過労死と残業時間との因果関係について、ある一定の目安を定めています。
それは、月に80時間以上です。
ただ、これは統計の産物であり、すべての人にあてはまる訳ではなく、その個人差は当然あります。
これについて、私たちはどのように考えたらよいのでしょうか?
答えは、「大丈夫、大丈夫」と自信がある人ほど、この時間を守って欲しいという事です。
その人がどれだけ疲労やストレスに耐えうるかどうか、というのはもちろん個人差があります。
ただ、疲労やストレスに弱い人ほど、自分の分限をわきまえています。
個人的な話ですが、私は基本的には1日6時間以上の睡眠は必須です。
これ以下で、3日以上過ごすような過重な労働が続くと、胃腸がおかしくなるか、体調不良で倒れて強制的に休息を取らされます。
つまり体にブレーカーがあり、ある意味心臓発作やうつ病になる前に、ブレーカーが落ちてしまう構造になっています。ですので、絶対無理できないのです。
無理や頑張りのきく人は、ある意味このブレーカーがないという言い方ができます。
睡眠時間数時間で、1週間も働き続ける人などは要注意です。
ある日突然、心疾患や脳卒中で突然死する可能性は否定できません。
「自分は体力に自信がある」という人ほど危険です。
そのため、残業時間についてしっかり守る必要があります。
残業時間別に見る心身への影響と危険度
残業時間別にみる心身への影響を見ていきます。
ポイントは、いかに休息の時間を保持できているか?です。
どんなに仕事自体がハードワークでも、1日の内、どの程度休息時間を取れているか?あるいは土日にどの程度休息時間が取れるのか?という点が重要になってきます。
残業60時間のケース
1ヶ月の残業が60時間の場合、厚生労働省が定めた月80時間より下ということになります。
月に20日間出勤した場合、1日あたり3時間という事になります。(労働時間11時間)
9:00から出勤の会社の場合、お昼休み1時間として18時までが法定労働時間、18:00~21:00までの残業時間という事になります。
みなさんにとって、これは多いでしょうか?少ないでしょうか?
22:00からが深夜残業となりますので、ぎりぎり深夜残業の入らないレベルという事になります。
この残業時間で、休息時間が1日の間で取れるかどうか考えてみましょう。
通勤時間を1時間とすれば、帰宅は10時という事になります。
晩ご飯を急いで食べて、お風呂に入り、12:00に就寝すれば6時間~7時間は睡眠時間を確保できます。(理想の睡眠時間は7時間~8時間といわれています。ぎりぎりセーフでしょうか?)
睡眠時間に十分睡眠が取れていれば、何とか疲労やストレスとためないで生活できるといってよいかと思います。
ただ、これは精神的ストレスがかからない標準状態で、という事になります。
会社での人間関係でストレスを抱えていたり、目標達成への締め付けが厳しい場合、その精神的ストレスは多大なものになります。
こうした精神的ストレスはまずどこにかかるかというと、「睡眠の質」に関係してきます。
つまり、なかなか寝付けない、朝5時ぐらいに起きてしまう、という場合は要注意です。
また、7時間睡眠が取れている場合でも、「昨日の事が忘れられない、疲れが残る」と感じる場合は、やはり要注意です。
月80時間を下回るからといって安心せず「眠れない、疲れが残る」というような状態が持続するのであれば、仕事時間を減らし十分休息を取る事をお勧めします。
残業80時間のケース
1ヶ月の残業が80時間の場合、厚生労働省が定めた過労死ラインに達する事になります。
具体的にどんな生活になるか考えてゆきましょう。
月に20日間出勤した場合、1日あたり4時間という事になります。(労働時間12時間)つまり、18:00~22:00までの残業時間という事になります。
通勤時間が1時間であれば、11時に帰宅、どんなにがんばっても就寝時間は12時を超えますので、睡眠時間は6時間取れれば、といった所でしょう。
前節の月60時間との大きな違いは、「いったん仕事を忘れてリラックスできるか?」という点です。
どんなにストレスがあっても、家でゆっくり食事を取ったり、お風呂に入る、家族と談笑する、ダラダラTVを見る、など「仕事」を忘れてリラックスできる時間が取れればよいのですが、残業80時間ではとても厳しそうです。
家に帰ってやらなければならない事(食事など含む)をやって、寝れば、すぐ次の日がやってきます。
つまり、リラックスできる時間がなく、常に仕事をしている緊張状態に心身が晒されているという事なのです。
もしこのような状態に置かれている場合、心身の疲れや不調にかかわらず、すぐにでも休息を取る事をお勧めします。
どうしても、現状難しい場合は、とにかく土日を使って完全休養を心掛けましょう。間違っても土日に仕事をしようなどとは考えず、「仕事は忘れる」ようにしましょう。
残業100時間のケース
残業100時間レベルになると、特に過労死の危険が高まってきます。
厚生労働省では、特に過労死発症1ヶ月前、100時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいとしています。
実際の生活に当てはめると、月に20日間出勤した場合、1日あたり5時間という事になり(労働時間13時間)、18:00~23:00までの残業時間という事になります。
こうなると、すでに健康的な生活は破綻しているといってよいでしょう。
このレベルの残業時間となると、もはや睡眠時間は取れても4~5時間といった所でしょうか。
また、もはや家に帰るのもめんどくさいので、会社に泊まるなどの事例も出てきます。
前節で述べた唯一の救いであった土日も、休日出勤しているなどの事例も散見されてくる事でしょう。
もちろん、仕事にはやらなければいけない時があります。
こんな私でも、徹夜で仕事を仕上げた事だってあります。ただそれはあくまで一過性のものです。
この状態が少なくとも1ヶ月以上続くという状況をぜひ冷静に考えてみて欲しいと思います。
また、ここまでの激務に耐えられる人は、ある意味ブレーカーを持っておらず、「睡眠時間なんて4時間で十分だよ。」などと考えている頑健な方でしょう。(もし自覚症状があり、我慢している方は、すぐにでも休息しましょう。体を壊しても会社は守ってくれません。)
こういった方はある意味自覚症状の乏しい方でもあります。
「少し疲れる」「頭がふらふらする」程度では、休息を取ろうとしない人たちばかりです。
そうした人ほど、過労死の危険性が高いのだ、ということをぜひ考えて欲しいと思います。
残業で高まる二つの疾患
過剰な残業時間でどのような疾患にかかる可能性が高いのか、具体的に述べてゆきたいと思います。
脳・心臓疾患
過剰な残業時間により、脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血)や心臓疾患(心筋梗塞、心不全)などのリスクが高まります。
発症後、適切な処置をしない限り死亡する危険性が高いため、いわゆる突然死、過労死と直結する病気と言っても良いでしょう。
どちらもいわゆる血管に関係した病気という事が言えるでしょう。
なぜ、過剰な残業時間でこうした血管疾患へのリスクが高まるのでしょうか?
まだ完全な因果関係は証明されていませんが、一説には自律神経との関係性です。
自律神経は、交感神経と副交感神経があり各臓器をシーソーのように調節しています。
基本的には交感神経が興奮作用のある昼間の神経、副交感試験がリラックスさせる夜の神経という事ができます。
血管系で言えば、交感神経は心拍数を上げ、血圧を上げ、血管を拡張させます。副交感神経はその逆になります。
過剰な残業時間は、リラックスする時間を奪うため、つねに交感神経により興奮状態にあり、血管に負荷がかかる事が考えられます。
そのため、血管がやぶける→脳卒中、心臓疾患が起こると考えられます。
どちらの病気も、あらかじめ予測するのは非常に困難であり、かつ発症すると死亡の可能性が高く、回復したとしてもこれまでの生活を維持できないほどの後遺症が残る可能性があります。
精神疾患
過剰な残業時間により発症するリスクが高い病気として、うつ病を筆頭とした、パニック障害、各種依存症などの精神疾患があります。
どの精神疾患も、一度発症してしまうと簡単に治す事ができません。
うつ病を例に説明してゆきます。
うつ病は、治るまでに短い方でも半年~1年、長い方だと数十年という期間を要する場合があります。
症状が緩和されても、実際にこれまでのように仕事に復帰するには、かなりのリハビリが必要です。
まず、家から出られるか、電車通勤は可能か、簡単な軽作業はどうか、人間関係が発生する仕事はどうか、など時間をかけて慣らしてゆかなくてはなりません。
また、うつ病はある一定程度の前段階(不眠、抑うつ気分など)がありますが、「疲れているだけ」と過剰残業を続けていると、ある日突然会社に行けなくなった、ベットから起きあがれないなどの重篤な社会不適応を起こしてしまいます。
ぜひそうなる前に(症状が軽微な内に)、休息を取るなり、お医者さんにかかるなりして、適切に対応される事をお勧めします。
依存症(アルコール依存症、買い物依存症)なども、非常に治しづらい難治性の疾患です。
ぜひ、軽微な内に適切な治療や休息を取る事をお勧めしておきます。
残業時間に限らず、身体症状があれば早めに休息を!
これまで残業時間別にその心身への影響や、危険度について見てきました。
繰り返しになりますが、残業60時間、80時間、100時間はそれぞれの目安に過ぎません。
統計学的処理であり、個人差や個人個人のストレス状況まで考慮に入れていません。
残業が月80時間を超えるという方は、心身の不調の有無にかかわらず、休息を取るように心掛けてください。
「大丈夫」と思っていても、体が悲鳴を上げている可能性があります。
「私は体が丈夫だ」と考えている人こそ危険だと言うことを覚えておきましょう。
残業が月60時間を下回る場合も注意が必要です。
様々な職場環境により精神的ストレスの度合いは異なります。
少しでも症状や慢性的疲労がみられるようであれば、迷わず休息される事をお勧めします。
何より、法定で定められた残業時間は月45時間です。(月20日の勤務で平均1日2時間強。18:00~20:00までの残業時間)
これを超えて残業している事が6ヶ月以上続いているのであれば、それは違法である可能性があります。
月50時間~60時間の残業でも、十分体を壊しうるという事を覚えておきましょう。