「転職も1つのスキル」と言われるほど、転職する人も多くなってきました。
転職するときはたいてい「履歴書」「職務経歴書」を作成します。
これら応募書類に虚偽の内容を記載することは当然できませんが、記載内容を間違ったり、意図的でなくとも不十分であると後から気づいたりすることもあるでしょう。
無事転職できたあと、会社からマイナンバーの提出を求められた際に、「マイナンバーで職務経歴の誤りがバレてしまうのではないか」と、心配になる方も少なくないでしょう。
同様に副業を行っている方が転職した場合、マイナンバーの提出で副業がバレてしまうのではないかと心配になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、転職時にマイナンバーを提出することで過去の職歴や副業がバレるかバレないか、バレないようにするにはどうすれば良いかについて解説します。
なぜ、会社にマイナンバーを提出しなければならないのか
マイナンバーとは、国民一人ひとりが持つ12桁の番号のことです。
なぜ、マイナンバーを会社に提出しなければならないのでしょうか。
それは、会社が「社会保障及び税に関する手続書類に従業員等の個人番号・特定個人情報を記載して、行政機関等及び健康保険組合等に提出する」(はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)より)必要があるためです。
これは法律(番号法)に定められたものですので、全ての企業に義務付けられています。
はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編) より抜粋
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/270414firstguideline.pdf
会社はマイナンバーを用いて従業員の過去の職歴を把握できるか?
番号法では、マイナンバーの利用者がマイナンバーを利用できる範囲を明確に定めています。
具体的に言うと、会社が従業員のマイナンバーを集めてできることは、「税務関係の申告書等にマイナンバーを記載して提出する」ことと、「社会保障関係の申告書にマイナンバーを記載して提出すること」の2つです。
会社がマイナンバーを集めたからといって、そのマイナンバーを使って、従業員の個人情報を何でも入手できるということにはなりません。
マイナンバー(社会保障・税番号制度) 民間事業者の対応 より抜粋
http://www.cao.go.jp/bangouseido/pdf/jigyousya_2909_00-26.pdf
市区町村や税務署等の行政機関は、各企業から提出を受けたマイナンバーを「公平・公正な社会の実現」、「行政の効率化」、「国民の利便性の向上」などマイナンバー制度の目的を実現するために利用します。
このような行政機関を「個人番号利用事務実施者」と呼びます。
対して企業等は「個人番号関係事務実施者」と呼ばれ、市区町村や行政機関などがおこなう個人番号利用事務のために、従業員など他人のマイナンバーを取り扱います。
すなわちマイナンバーを記載した書類等を作成・提出することが企業の役割として求められます。定められた事務以外でマイナンバーを利用することは違法となります。
このため、企業が従業員から集めたマイナンバーを利用して、過去の職歴を調べることはできません。
それよりも認識しておくべきなのは、入社時に提出を求められる「年金手帳」「雇用保険被保険者証」の存在でしょう。これら書類には年金や雇用保険加入当時の会社名が記載されています。
つまり、マイナンバーの導入に伴い職歴がバレるということはありませんが、今まで把握できた情報が、今までと同じように把握できるということになりますので、履歴書や職務経歴書には、正しい情報を正確に記載する必要があると考えましょう。
経歴詐称のリスクを冒すより、転職に対する情熱をきちんと相手企業に伝えることの方が、何倍も大切です。
ちなみに、企業が従業員のマイナンバーを収集する際には、その利用目的を伝える必要があります。
これを超えてマイナンバーを利用した場合、厳しい罰則が用意されていますので、わざわざ危険を顧みず、不正に従業員の個人情報を入手しようとする会社は無いでしょう。
マイナンバーを会社に提出するのは「法令で定められた義務」ですから、会社の指示に従いきちんと提出するようにしましょう。
マイナンバーを用いて副業が把握できるか?
会社が従業員のマイナンバーを集めてできることに「税務関係の申告書等にマイナンバーを記載して提出する」ことがあると説明しました。
具体的に言えば、企業は従業員が住んでいる市区町村に「給与支払報告書」を提出する義務があります。
この給与支払報告書には番号法が始まった後はマイナンバーを記載するようになりました。
ここで知っておいて頂きたいのは、各企業から市区町村に対して、今までも「給与支払報告書」は提出されていたということです。
今まで渡していた情報にマイナンバーが追加となるというのが、マイナンバー制度の基本的な考え方です。
つまり、マイナンバー制度が導入されたからと言って、会社が行政に提出する情報が増えるということはなく、行政機関や市区町村が把握できる情報に変わりはないということです。
なお、この税務関係の書類のやり取りにより、企業に副業がバレる可能性はゼロではないようです。
企業と市区町村や税務署等の行政機関は、税務関係の書類のやり取りで「合計所得額」や「住民税額」をやり取りします。
副業していなければ、その従業員の住民税は給与所得分だけですが、副業することで会社が支払っている給与以上の住民税額が税務署から通知されます。
会社の担当者は、「この従業員には何らかの副収入がある」ことは把握ができてしまいます。
ここで勘違いしてはいけないのは、マイナンバーが記載されるようになったからこれが把握できるようになったのではなく、今までの情報のやり取りでも、副業がバレる可能性はあったということです。
マイナンバーを提出したことが原因で副業が把握できるようになったのでは無いということは、認識しておくべきでしょう。
なお、副業については、副業の収入が会社にバレないように確定申告を行うことで、会社に副業をバレないようにすることが可能です。
確定申告をする際、「住民税に関する事項」という表の「給与・公的年金等に係る所得意外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という項目があるので、ここの「自分で納付」に◯をつけます。
これにより、課税された住民税額は給与からの天引きで徴収されることが無くなりますので、副業がバレにくくなると言われています。
こうした確定申告のテクニックに関しては、副業に関する書籍等で詳しく解説されていますので、「どうしても副業が会社にバレたくない!」という方は、別途確認をおこなってください。
マイナンバーに関する正しい知識は現代の社会人に必要なスキル
このように、企業が従業員のマイナンバーを集めるのは、「法令で定められた義務」となります。
先に説明した通り、マイナンバーを提出してもしなくても、企業と各行政機関は皆さんの個人情報をやり取りしますので、提出を求められたら指定された方法できちんと提出するようにしましょう。
ちなみに、企業が従業員のマイナンバーを収集する際には、その利用目的を伝える必要があります。
また、マイナンバーを収集する際には、本人確認を厳格に行う必要があります。
具体的には「写真付きの身分証明書(免許証やパスポート等)」と「マイナンバーを確認できる公的な書類(個人番号通知カードや住民票等)」の確認が行われます。
この2つの確認を1枚で行われるのが「マイナンバーカード(個人番号カード)」ですので、転職の前にマイナンバーカードを取得しておくと便利です。
マイナンバーカードには、マイナンバーが記載されています。
紛失等により個人情報漏えいの危険性がある場合には、市区町村の窓口に申請すれば自分のマイナンバーを変更することも可能です。
こういったマイナンバーに関する基本的なルールを知っておくことは、現代の社会人に必要なスキルです。
マイナンバーを適切にスマートに扱えば、転職時の好印象にもつながるのではないでしょうか?