今回の記事は、パートを辞めたい人で、
「退職はいつまでに伝えればよいのか?」
「必要な手続きは何か?」
「波風に立てずに辞める事を上手に伝えたいが、どうすればよいか」
などの様々な疑問をお持ちの方に、必要な手続きや方策についてお教えします。
そもそもパートとは何なのか?
そもそも、パートとはなんでしょうか?
「一日、一週間または一ヵ月の所定労働時間が当該事業場において、同種の業務に従事する通 常の労働者の所定労働時間に比し、相当程度短い労働者」(厚生労働省の毎月勤労統計調査での定義)という定義です。
ひらたく言えば、通常の正社員より勤務時間が短い者、という事です。
ですので、法律的には、「アルバイト」と「パート」に明確な差異はありません。
もちろん、どちらも「労働者」ですので、労働基準法や、最低賃金法など、労働者を保護するための法律は適用されます。
また、有給休暇も取得できますし、最近では賞与(ボーナス)を出すところも増えてきたようです。
パートと正社員に仕事の差異はあるのか?
先ほど述べたように、パートの定義は平たく言えば「正社員より勤務時間が短い者」という定義だけで、仕事の差異(レベル)に考慮するようには求められていません。
そのため、パートでも正社員並みの働きをしてがんばっていらっしゃる方はたくさんいます。
会社側からいうと、優秀なパートほどありがたいものはないのです。
正社員よりは、安い賃金で済みますし、いざ経営が赤字で人件費を削減しなければならない場合、雇用期間の定めのあるパート、アルバイトは雇用を終了させる事ができるからです。
パートの雇用契約書には期間の定めはあるかどうか?
ここからが本題ですが、パートを契約時に「雇用期間の定め」があるかどうかを確認してみてください。
・雇用期間の定めがあるか、ないか
・雇用期間の定めがある場合は、1年以下であるかどうか
これによって、退職時の対応は少し異なりますので、次の章で説明してゆきます。
退職はいつまでに伝えればよいか?
前章で「雇用期間の定め」について確認をお願いしました。
この章では、これに基づいて説明してゆきます。
雇用期間の定めがない場合
雇用期間の定めがない場合は、無期雇用となっています。
この場合の退職の申し出は法律で定められており、「(雇用)期間の定めがない場合は、原則2週間前(月給制など期間によって報酬を定めた場合は、賃金計算期間の前半)までに申し出る。」となっています。
つまり、最低でも2週間前までに、退職を申し出れば問題なく退職できる事になります。
理由のいかんは問われません。どんな理由でもOKです。(自己都合での退職が可能)
ただ、社内規定などに「退職を希望する者は、退職日の○○日前までに直属の上司に申し出ること」などの規定があり、それを認める労働契約書に署名している場合があります。(○○は1ヶ月が多いと思います。)
その契約書にサインしてあれば、基本的にはその規定を認めた事になりますので、規定に従う必要があります。
ただし、法律の文言は社内規定よりも強く、優先されますので、2週間で退職したければ可能です。(ただ円満退社というわけにはいかなくなる可能性があります。)
雇用期間の定めが1年以下
この場合、有期雇用契約になっており、民法で「やむ得ない事由が無い限りにおいては、期間中に退職できない」となっています。
そのため、退職するためには「やむ得ない事由」が必要になります。
やむ得ない事由とは以下のようなものが当てはまります。
・賃金不払いやパワハラ、セクハラなどの会社側の不履行や労働条件の悪化
・労働者が、心身の不調により、就労不可能になった場合
・やむ得ない家庭の事情など
いかかでしょうか?自分の中で該当する事由はあったでしょうか?
ただし、雇用者が強く慰留するような場合、トラブルとなるケースもあります。
特に注意が必要なのは、高度な専門的知識を教育訓練で施されたような場合であって、こうした場合は、教育費用などの弁済を求められる場合があります。
それ以外のケースであれば、本人が強く希望している場合は認められるケースがほとんどです。
有期雇用期間中であっても、退職したいのであれば、勇気をもって上司に告げてみてください。
雇用期間の定めが1年以上で、すでに1年以上就労している
このケースの場合、有期雇用契約ですが、理由のいかんにかかわらず自己都合で退職する事が可能です。
「労働契約の期間の初日から1年を経過した日以降においては、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます」(労基法)
ただし、円満退社をするのであれば、ある程度社内規定やその会社の方針に従う方がベターです。
退職の上手な伝え方
前章でみたように、雇用形態によって退職に理由が必要である場合とそうでない場合がありました。
この章では、円満退社に向けて、上手な退職の伝え方をお教えします。
一番良い魔法の言葉は「家庭の事情」
無期雇用の場合や、有期雇用で1年を経過した人は、基本的に「退職」に理由はいりません。
「一身上の都合です。」の一言で済むのですが、「退職します。」と告げて「はい、分かりました。」と即答する上司もいないでしょう。
「なぜ退職するのか?」と理由を聞かれる場合がほとんどだと思います。
こうした場合に、社内の事を言うのはあまりお勧めしません。
もちろん、こうしたときに面と向かって社内の良くない部分を正直に言える人は、本当にすばらしい人だと思います。
しかし、ほとんどの人は社内の事由(給料が安い、残業代がつかない、仕事内容が高度すぎる(パートがするべきではない)、上司とのそりが合わない)は避けて別の理由を探す事でしょう。
こうした場合に、もっとも波風が立たず、かつ退職を認められやすい言葉が家庭の事情です。
以下にいくつかの例を示します。
・親の介護が必要になり、ここから引っ越す事になった。
・夫が転勤となり、それについて行くことになった。
・子供の塾に通い始め、送迎などが必要になった。
有期雇用契約(1年以内)においての「やむ得ない事由」にもこの「家庭の事情」は適用できますので、その場合もお勧めです。
こうした家庭の事情というのは、社内の理由と違い、上司にいろいろ詮索できない部分があります。
ですので、多くの上司は「それは本当なのか?」と思いつつ、「まあ、それならば仕方ないね。」という事で、あっさり了承してくれる事でしょう。
それでも上司に言えない場合
現在の上司に、どうしても「退職」を伝えるのが難しい場合は、少しまわりくどいですが別の方策もあります。
・上司の上司に伝える。
・総務部に伝える。
どちらも、あまり顔なじみでなく、淡々と応じてくれる方がベターです。
大事な事は、上司だけに伝えた時、応じてくれない、取り合ってくれない、罵声を浴びせるなどの対応である場合は、「退職したいという意思」を別の人に伝え、周りから攻めるという事です。
仮に、上司の上司が了解してくれれば、それを上司は反故にする事はできません。
また「総務部」はある意味、法律的に「退職の意思を反故にできない」という事はよく知っていますので、事務処理的に淡々と動いてくれる場合もあります。
この場合も、あなたの上司はこれを反故にはできません。
一点注意するべき点は、どのような形で誰に伝えようとも、最終的にはあなたの「上司」にも伝達されます。
その時の事をよく想定しておくべきです。
もちろん、直接伝えるよりも上司の機嫌が悪い事は言うまでもありません。
ただ、どうしても現在の上司には言えないという場合は、信頼できる人、あるいは客観的に動いてくれる部署などの「つて」を使って動いてみましょう。
会社全体がブラックでどうしようもない場合は、会社以外の第三者機関(労働基準監督署、弁護士会、NPO法人など)にも相談してみましょう。
退職までの過ごし方
退職をうまく上司に伝えられたら、いよいよ退職の準備を始めます。
業務的には、「引き継ぎ」がメインとなります。ここでは、退職のまでの過ごし方についてご説明致します。
正社員並みに働いていた人は要注意
正社員並みに、かなりがんばっていた人は、引き継ぎの業務も大変です。
特に、自分しか知らない業務がたくさんある場合は要注意です。
その「自分しか知らない業務」は、何らかの形で引き継ぎする事が求められます。
「引き継ぎ」の方法は、以下2つです。
・OJT(オンザジョブトレーニング:あなたが仕事を一緒にやりながら後継者を指導するやり方です。とにかく時間がかかります・・)
・文書等で引き継ぎを行う。
責任の重い仕事をしていた人ほど、「引き継ぎ」業務は過重になりがちです。
時には、「OJTが終わるまで、退職を伸ばしてくれないか?」など言われる場合もあるかもしれません。
そういった場合は、毅然とお断りしましょう。
あくまで、退職日までにできるOJTのみを行って、OJTができない場合は文書による引き継ぎを行ってください。
仕事が正社員並みという自覚がある人は、なるべく常日頃から仕事の棚卸しをして、他人にもやってもらう(有給休暇時などを利用するとよいと思います。)、手順書を作っておくなどの備えをしておいてください。
退職までの人間関係
退職が決まると、次第に(一気に?)周りにもその情報がまわります。
周りの視線や、上司の態度が不安だという人も多いのではないでしょうか?
もちろんこれは、どんな職場にいるか、まわりとの人間関係がどうなのか、といった個人差が多分にある問題です。
ただ、ごく一般的な事として言うならば、パートは短期の雇用契約である事は自明の理ですので、退職に対してそれほど過敏な反応は薄いと思います。
ただ、正社員並みのすばらしい働きをしていた人は、惜しむ人も多いかもしれません。
特に上司にとっては痛手という場合、上司の態度も変化するかもしれません。
そういった場合は、「まあ、承認業務だけきちんとしてくれれば、それでよい」と割り切りましょう。
態度が変化するような上司は、所詮その程度の人だと思って、退職してよかったと逆に思えるのではないでしょうか?
退職までの書類手続き
退職後、転職する人、専業主婦に戻る人様々いると思いますが、必要な書類に関してはきちんと把握しておきましょう。
この場合に役に立つのは、上司でなく「総務部」です。
退職すれば、上司は上司にあらず、もう関係ない人になりますが、様々な書類のやりとりが「総務部」と発生します。
「源泉徴収表」や「退職証明書」など必ず必要な書類もありますので、ぜひ「総務部」の人と仲良くしてください。
これらの書類が、退職したとたん適当になってしまい、いつまでたっても送付して来ないというケースがあるようです。
退職が決まったら、上司よりも総務部担当者と仲良くしてください。
まとめ
いかがでしたか?以下に内容を要約しておきます。
・雇用期間に定めがあるか(定めは1年以内か)まず確認しましょう。
・退職の理由は、「家庭の事情」を事由とする事がお勧めです。
・退職は直属の上司に伝えるのが基本ですが、難しい場合は、信頼できる人や総務部を活用します。
・引き継ぎは、退職日までにできる範囲で行います。(最低限でOK!)
・退職後の書類のやりとりは「総務部」と行います。退職前から「総務部」との関係性を構築しておきましょう。
ご参考にしていただき、ぜひ円満退職をして、あなたの人生を輝かせてください!