仕事になじめない、仕事が覚えられず怒られてばかり・・・という事で悩んでいませんか?
最近、「大人の発達障害」という言葉が巷で言われるようになりました。
とても勇気がいる事ですが、十分に自分の事を知って、社会に適応できればそれはもう「障害」ではありません。
ぜひ、そう思ってあなたも一歩を踏み出してみましょう!
自分は人(他人)と違うかもと思ったら
パソコンでの処理や計算が得意な人、人相手の交渉事が得意な人、それぞれの個性を生かすことで会社に多様性が生まれ、様々な苦難に立ち向かう事ができます。
ただ会社では、それぞれの個性がありつつも、おしなべてある程度の能力は平均的に持っている事が求められます。
例えば、いくら計算処理が得意とはいえ、上司や同僚とコミュニケーションが全く取れない、という事であれば仕事は成り立ちません。
最近、いくら努力してもそうした平均的な能力を学習できない、獲得できない、という事で悩んでいる人について注目されるようになってきました。
「大人の発達障害」と呼ばれています。ご存知でしょうか?
なぜ、大人になってからこのような発達障害が判明するのでしょうか?
それは、多くは学生と社会人の違いに起因します。
小学生~中学生~高校生という学生時代においては、少し授業についていけない、人間関係があまりうまくいかない、などの事があっても、何となく過ごす事は可能です。
本人も「自分は少し他人と違うのだろうか・・・」と思う事があっても、ある意味学生生活には「適応」できているので、本人も親も見過ごしてしまうのです。
これが社会人になると、環境はガラリと変わります。
これまで、嫌な人や合わない人とは距離を置けばよかったのですが、自分の上司であればそうはいきません。
世代も、考え方もバラバラで、その人間関係の中で常に高いスキルで職務を能率的にこなし、常にアウトプットが求められるのが「仕事」です。
これまで見過ごして何とかやってこれた場合でも、とたんに職場には適応できず、「不適応」の状態になってしまうのです。
これが、「大人の発達障害」です。
いわゆる個性(得意不得意)との違いの見極めは、その適応レベルです。
すなわち、どんなに努力してもその特性を払拭できず、職場での仕事や人間関係に致命的なレベルで影響を及ぼす場合です。
「自分は、他と違うのではないか・・」と思ったら、以上の事で判断してみましょう。
勇気を持って医療機関に行ってほしいわけ
どんなに努力しても、その自分の特性を払拭できず、職場や仕事に致命的レベルで影響を及ぼしている、という状況であれば、勇気を持って医療機関を訪れてみる事をお勧めします。
ちょっと敷居が高いかもしれませんが、様々な心理テストや能力テスト(IQなど)を行う事で、自分がそのような特性や性格を持っているか知る事ができます。
「今まで怖くて、どうしても受診する気になれなかった。」という事をよく聞きます。
確かに「発達障害」という事であれば、いわゆる「薬」で完治させる事はできません。
ですが、自分の特性を知る事で、それなりの行動様式や予防措置を取り「不適応」の状態を「適応」の状態にさせる事ができます。
一番大事なのは、「自分を知る」という事なのです。
大人の発達障害の種類と辛くなる理由
あてはまるものがあるのであれば、注意してみましょう。
それが、どんなに努力しても直せないのであれば、やはり医療機関にかかる事をお勧めしておきます。
自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラムは、典型的な発達障害の一つですが、要素は二つあります。
一つは言語発達障害で、もう一つは知能障害です。
このどちらも未発達な古典的自閉症は、比較的見分けやすく、小児の頃に診断される場合がほとんどですが、言語も知能も正常で一見すると健常人と見分けがつかない場合があります。
これがアスペルガー症候群です。
アスペルガー症候群で一番顕著なのは、あいまいな指示や婉曲的な表現が苦手な事です。
「空気や行間が読めない」とも言われます。
例えば、ハッパをかける意味で上司が「顧客と喧嘩して来い!」なんて言ったとします。
アスペルガー症候群の人はまさに言葉通りに受け取るので、「喧嘩するの?」と本気で悩んでしまいます。
その結果、上司は半分冗談ですが、冗談とは受け取らずに、不機嫌そうに黙り込んでしまいます。
こうした場面で、健常人(あまり良い言葉ではないですが)がどのように判断しているかというと、声色、目線、表情、態度、過去からの上司コミュニケーションパターンを総合的に判断して、「ああ、ハッパを掛ける意味で言っているんだな」と判断します。
アスペルガー症候群においては、ある意味古典的自閉症的な部分があり、特定の感覚や物事への興味や注目が高すぎて、すべての感覚をバランスよく使う事が苦手であると考えられます。
そのため、この場合上司の言葉だけに注目してしまったと考えられるのです。
ごく一般的には、アスペルガー症候群の方は、チームで動く仕事(コミュニケーションスキルが必要)や営業などには不向きとされています。
また、昔からコミュケーションが苦手である事が多いので、人見知りが激しく、自分が傷付けられたと感じると過剰に反応したり(暴言・暴力)、二次的な精神障害(うつ、神経症など)を併発している場合もあります。
多動性障害(ADHD)
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、その名の通り不注意(ミスが多い、忘れ物が多い)、多動性・衝動性(じっとしていられない、話題がころころ変わる)を主軸とする障害です。
子供の頃は、多かれ少なかれそんな部分もありますので(小学生低学年の授業を見た事のある方は分かると思いますが・・・)見過ごされがちで、大人になってから「あれ、周囲と少し違うかな?」と本人や周りの大人が気付くケースもあります。
職場においては、とかくミスが多いのは致命的になります。
上司に言われた事をすぐ忘れてしまう、何度も同じ過ちを繰り返す、などのADHDの特性は、指導している側から見れば「俺(私)の言った事を無視している!」と捉えられてしまうので、人間関係の悪化を招いてしまいます。(指導する側が最も頭にくる事は、指導した内容について相手に無視される事です。)
このような特性から、基本的には周囲になじめない、人間関係が得意でない、と悩んでいるADHDの方も多いようです。
学習障害
学習障害は、アスペルガーやADHDと違い、世間の認知度は低いですが、有病率は数%にのぼるとされ、それほどまれな障害ではありません。
グレーゾーンも含めればかなりの確率に上る可能性もありますが、これまで日本では「勉強が苦手」の一言で片づけられているのが現状です。
最も、仕事に関係しているのは識字障害です。
識字障害とはいわゆる「読み書き」がうまくできない障害ですが、その病型は多岐にわたります。
これは、読んで書くという行為がとても複雑な脳の経路を通して行われているからです。(単純に見えますが)
例として、「りんご」という文字を読む行為を考えてみましょう。
まず、そこに文字が書かれている(日本語、英語?それとも絵?)事を認識します。
次に、「り」は「り」として、「ん」は「ん」として視覚的認識します。(多い症例では、「は」と「ほ」の見分けがつかない、文字が反対(鏡文字)に認識される、などがあります。)
その次に、視覚情報を音声情報に、つまり「り」を「Ri」として発音する事を結びつけます。
最後に「ri」「n」「go」と読んで「りんご」のイメージ(赤い、果物、物の名前)を思い浮かべます。
ここで重要なのが、文字の意味をしっかり把握できないと、文章は理解できないという事です。
「りんごをたべた」という文章を「りんご」「を」「たべた」と一瞬で意味付けをしなければ文章をよどみなく読むのは難しいのです。
この障害も比較的多くみられる症例です。
これら複雑な経路のどこで障害があっても、「読む事」は円滑に進まないのです。
それゆえ、障害の場所により、その症状も多岐にわたります。
「読み書き」の障害は、職場においてはありとあらゆる場所で必要になるため、「識字障害」は誰の目にも明らかか?と思われがちですが、グレーゾーンの場合はそうでもありません。
どういう事になるかというと、ある人が1ページの資料を読み込むのに5分かかるとします。
識字障害の人は4倍の20分かかるとします。
ただ時間がかかるだけ、と思ってはいけません。
健常人の何倍もの能力を総動員して「読む行為」を行うので、その疲労度は、通常の人の何倍もの疲労度になるのです。
これが、毎日の業務にどれほどのハンデを生むのか、もうお分かりだと思います。
このように、周りから理解されず、人知れず悩んでいる「識字障害」の方はとても多いのです。
大人の発達障害の種類別対処法
ここでは、各発達障害別に見る、対処法をご説明します。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の場合、まずもっとも苦手なのは前章で書いたように人間関係です。
また、感覚が鋭敏な部分があり、ざわざわ騒がしい職場や、騒音がうるさい場所では、非常にストレスを感じる場合があります。
まず人間関係ですが、あまりぼんやりとした大枠での指示や意見は誤解や混乱を招きます。
上司から細かい直接的な指示を受けるように心がけましょう。
わからないときは遠慮せず「○○という指示ですね?」とこまめに確認を取るようにしてください。
また、医療機関である程度の診断がなされたのであれば、上司には勇気を持ってカミングアウトしてもよいかもしれません。
これで無用な誤解や摩擦はかなり減らすことができます。
また、良い上司であれば、あなたが働きやすい環境や、やりやすい業務を回してくれる事でしょう。
アスペルガーの方は、得意分野においては非常に集中力を発揮します。(むしろ時間を忘れて没頭してしまうので、そちらの方が心配ですが)
自分の得意の業務を回してもらった方が、会社の役に立ちます。
ぜひ、そうした視点で上司に話してみるとよいでしょう。
多動性障害(ADHD)
多動性障害では、やはり不注意による仕事のミスや「し忘れ」が最も大変な事です。
上司からの指示は忘れず、メモを取りましょう。
そしていつまでにやるのかスケジュールを立ててデスクの上に貼っておきましょう。
もちろんこれは一例で、とにかく、いつでも目の付く場所に置いて、常に確認できる事が最も重要な事です。
また、色々な仕事が増えると混乱を来す場合がありますので、努めて優先順位などを決めておいて、「この時間はかならずこれをやり切る!」といった感じで「自分ルール」を決めておくと効果的です。
学習障害
学習障害は、非常に辛い場合も多いのですが、周りも中々気づいてあげられない場合があります。
あまり無理しようとせず、周りの理解を求める事も重要です。
ただ、様々なコンピューター技術の発達により、音声を自動的に文書に変換したり、またその逆をできるような技術も発達してきました。
もちろん、どこの部分に障害があるかにより使える場合とそうでない場合がありますが、適切にそうした技術を使う事で、ずいぶんと軽減がはかれる場合があります。
もちろん、周りの理解も重要な点ですので、まずは勇気を出してカミングアウトして、あなたの働きやすい環境を整えてもらってはいかがでしょうか?
勇気を持って踏み出せば、障害は個性になる
「自分は他人とは違うのではないか?」と思ったら、まずは医療機関を受診して自分を知りましょう。
そして、勇気を持ってその「特性」を周りにも理解してもらいましょう。
このようにして職場に適応できれば、もはやそれは「障害」ではなく、「個性」となります。
あなたも勇気を持って一歩を踏み出しましょう!