みなし残業は違法?みなし残業代の上限やブラック企業がつかう手法とは?

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「ウチはみなし残業制だから、残業代が出なくてもしょうがない」
とあきらめていませんか?

その会社の運用の仕方、大いに間違っている可能性があります。

その間違った運用の仕方や、対処法についてお教えします。

みなし残業は違法なのか?

いわゆる「みなし残業」(固定残業代、みなし労働時間制など)と呼ばれるものは、決して違法というわけではありません。

むしろ、本来の趣旨から言えば、効率的で経営者、労働者双方にメリットがあるものです。

例えば、営業職など、いつからいつまで働いているのか明確に区別できない、把握できないような場合、あらかじめ残業時間を決めておけば、経営者側は面倒な計算をしなくて済む、労働者側は、頑張って所定時間以内で仕事を終わらせれば、その分利益になるので、モチベーションにつながる、など双方にメリットが高いものです。

最大の間違いは、いつのまにか「所定の残業代さえ支払えば、労働時間が超過しようがどうなろうが一切残業代は支払わなくてよい。」という間違った解釈や運用が成されている事にあります。(ほぼ確信犯的にやられている事ですが)

次章から、その間違った運用を詳しく見てゆきます。

ブラック企業が使うみなし残業の運用手法

「所定の残業代さえ支払えば、労働時間が超過しようがどうなろうが一切残業代は支払わなくてよい。」という間違った解釈・運用は何もブラック企業に限った話ではありません。

有名な大企業や普通の企業でも、平然と行われている場合があります。

もし、現在在籍している会社でも、以下のような間違った運用がされていないか、チェックしてみてください。

みなし残業を適用しなくてもよい職種

元々「みなし残業制度」は、営業職や研究職など「どこまでが労働で、どこまでがそうでないのか?」区別しづらい職種に対して適用される制度でした。

今でもそうですが、営業職の多くは、外回りをして直帰するような場合、残業時間がカウントされません。

私の会社がそうでしたが、基本的に17:00で仕事が終わった事になるのです。

その代わり「みなし残業」ということで、多くの人は2時間程度の残業代が出ていました。(ただ殆どの人は、残業時間2時間を超えて残業していましたが・・)

ただ、事務所内で決まったルーチンをこなす人や工場内で仕事をする人などにも「みなし残業」が適用されている場合があります。

「みなし残業」自体は、どの職種限定という規定があるわけではないので、違法ではありません。

ただ、きちんとタイムカードが押せる環境にあるのであれば、無理に適用する理由は見当たりません。

つまり、適用するメリットがない職種なのです。(経理的に多少は楽という事はあるかもしれませんが)

このような場合において、所定のみなし残業時間よりも実労働時間が長く、超過分の残業代が支払われていないケースがあります。

これは、経営者が意図的に人件費(残業代)を削減するために、ほとんどの職種に「みなし残業」を適用している場合が多いのです。

本当は、「所定のみなし残業時間を超えた超過分については、支払わなくてもよいのではなく、支払わなければいけない。」という点が重要です。

もしあなたが、タイムカードをきちんと毎日押しているのに、みなし残業の時間よりも超過した残業時間について支払われていないのであれば、違法性が高いと言えるでしょう。

上限を守らない

みなし残業代の上限という言葉がよく出てきます。

これは、特別に決まっているわけではなく通常の時間外労働時間と同じです。

つまり、いわゆる36協定により1ヶ月で45時間、年間で360時間という上限を守る事を義務付けています。

1ヶ月45時間というと、1ヶ月20日間働いたとして、1日2時間ちょっとですね。

まあ、妥当な範囲ではないでしょうか。

あまりないのですが、「ウチの会社はみなし残業5時間だ!」という場合はこの上限を超えている可能性があるわけです。

「あまりない」と言ったのは、みなし残業の上限を超えて多く設定する企業は、実はあまりありません。

その分多く残業代を支払わなければいけないからです。

むしろ、次節に出てくる「所定のみなし残業時間を超えた分については支払わない」というケースの方が圧倒的に多いと思われます。

なお、36協定に関しては、注意点があり、労使の交渉により特別に年の半分までは(つまり6ヶ月まで)45時間/月の上限を超えてもよい事になっています。

ただ、ブラック企業などは、ほとんど労使交渉もないのに(まともな労働組合がある会社の方が少ない)これを根拠に45時間/月を超えて残業をさせる場合があります。

現在、たくさんの残業をして苦しんでいる人は、ぜひ「年の半分までしか認められていない」という点を押さえておきましょう。

所定時間を超えても、残業代は支払わない

「みなし残業」は所定の残業時間分をあらかじめ支払う制度です。

ただ、その所定の残業時間を超えた残業代は支払わなくてもよい、という事ではありません。

むしろ「支払わなくてはいけない」のです。

ですので、残業時間がきっちり分かる職種であれば、超過時間分は当然支払われるべきであり、支払わない場合は違法性が高いと言えます。

ただ、所定の残業時間が分かりづらい「営業職」などはどうすればよいのでしょうか?

例えば、「営業職」でみなし残業2時間が付いているケースを考えてみましょう。

一番良いと思われるのは、一度事務所に帰ってくる事です。

みなし残業中の20:00までは外回りをします。

その後事務所に帰り、営業報告書作成や残務仕事をするのがよいでしょう。

仕事を事務所内で行いますので、超過分の残業時間として認められやすいケースです。

もちろん、仕事がなければ、みなし残業中に直帰しても構いません。

どうしても事務所に帰ってくるのが難しい場合は、アポイントの有無や具体的な作業内容が決まっている場合、上司との電話のやりとりなど、仕事をしている証明になりやすいものがあれば、残業代として認められるケースが多いです。

弁護士やユニオンを介した交渉時には有効に活用してみましょう。

深夜勤務や休日出勤について支払わない

多くのブラック企業で横行しているのが、深夜残業や休日出勤における割増し残業代の不払いです。

通常の残業であれ、みなし残業であれ、深夜残業(22:00~)や休日出勤においては割増し賃金になります。(例:深夜残業の場合35%割増し)

こうした割増し賃金について、みなし残業だから、年俸制だから関係ない、と不払いである事は違法です。

もし、あなたが深夜残業や休日出勤をしているのであれば、割増し賃金がきちんと支払われているのか確認してみましょう。

過大な目標を与え、「持ち帰り」を強制する

最近、法定残業時間やみなし残業代については、かなり世間やマスコミの目も厳しくなり、会社も建前上は「コンプライアンス重視」という事で、規定に盛り込む企業も出てきました。

ただ、ここに来て新手の残業代不払いが増えています。いわゆる「お持ち帰り残業」です。

よくあるケースとしては、まずは目標や課題は法定労働時間ではこなせない量を出しておきます。

その上で、みなし残業時間以降の残業は「申告制」としておくのです。

つまり上司の許可が必要という事です。このような場合、多くの上司は簡単には許可を出しません。

「あの、明日の会議資料作りで、2時間ほど残業したいのですが」

「あー、それね、3日前に出してくれないと認められないよ。会議資料作りは基本的には、時間内でやってください。特別なものではないので・・」

また、最近多いのは、特定の時間を超えると、事務所そのものが閉められて使用禁止になるケースです。

このような場合、多くの人はどのような行動を取るのでしょうか?

お察しの通り、パソコンを持ち帰り、喫茶店か家で「サービス残業」を行う事になります。

この「しくみ」の巧妙な所は、パソコンの持ち出しだけは以外にゆるい規定になっています。

本来であれば、パソコンの持ち出しは、情報漏洩の可能性もあり厳しく規制すべき部分ですが、家で「サービス残業」をやらせるため、わざとゆるい設定になっているのです。

このしくみのやっかいな部分は、「会社の知らない所で本人が勝手に仕事をしているのだから、残業代はおろか労働時間も関係ない」という風にうそぶく事ができる点です。

現在では、こうした「お持ち帰り残業」についても、労働時間として算出すべきだ、との機運が高まっていますが、まだまだ対策は追いついていないのが現状です。

ブラック企業?と思ったら対処すべき方法

以上見てきたような事例が複数見つかる場合、「ブラック企業」かはさておき、違法性が高いものもあると思われます。

そうした場合の対処法についてお教えします。

外部機関に相談する

まずは、外部機関に相談するのがよいでしょう。

労働基準監督所、ユニオン、法律事務所などです。

違法な労働時間や残業不払いについては、マスコミなどでも取り上げられ、社会的な認知度も高まってきました。

そのため、専門でこうした問題に取り組む法律事務所も増えています。

多くは、着手金0円で相談できますので(成功報酬制)相談してもよいでしょう。

ユニオンの場合、基本的には団体交渉になりますので、交渉は長引きますし、場合によっては裁判にまで持ち込まれます。

個人の利益よりも、会社に団体で圧力をかけ、企業自体の体質を変えたい、同じ職場の仲間を救いたいという場合に、利用するのがよいかもしれません。

一点注意点があります。どのような形であれ、会社の規定(違法であるにしろ)に文句を付けるわけです。

残念ながら、それ以後会社に在籍している事による不利益は想定しなければなりません。

閑職、嫌がらせ、異動などのあらゆる事を想定しなければなりません。

そのような事になった場合に備え、きちんと逃げ道は用意しておきましょう。

具体的には、すぐにでも転職できるような「つて」、「スキル」などを準備しておく事です。

とりあえず、転職サイトへの登録などもしてもよいでしょう。

転職を考える

違法な残業時間、残業の未払いが横行している会社であれば、転職を考えるのもよいでしょう。

もちろん、残業代の未払いを取り戻したい、この企業の体質を変えたいという事であれば、法律事務所やユニオンに相談するのがよいでしょう。

しかし、一刻も早くこの企業から離れまともな企業に転職したい、という事であれば迷わず転職活動を選びましょう。

違法な残業や残業代未払いが横行している企業からの転職は、転職においても相手側の企業に十分理解されます。

また、転職にあたっては「転職エージェント」を活用し、再びブラック企業を選択する事のないように、十分企業の情報を得ながら転職活動をする事をお勧めします。

みなし残業制は違法ではありませんが、運用が間違っています

みなし残業制度自体は違法ではありません。

しかし、本来の意図とは大きく変質した運用が行われています。

これは経営者側の確信犯的な違法行為によって成されています。

こうした、違法行為がまかり通っているのは、ひとえに労働者側の権利を主張する「労働組合」の存在が希薄になっているからです。

こうした現状においては、私たち1人1人が声を上げてゆく必要があります。

決して泣き寝入りしないで、行動を起こすことをお勧めします。

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